(3)半切の裏打ち(肌裏打ち)
 前回半紙の裏打ちを載せましたが、一般に書を趣味とされる方は、半切(条幅を縦に二等分)を使われることが多いと思いますし、書にせよ絵にせよ本紙が紙の場合は裏打ち方法は同じなので、ここでは半切の裏打ちを取り上げてみます。
 基本は半紙と変わりませんので、説明の重複を避け、裏打ちを投げ裏打ち、裏打ち紙の継ぎ方を喰裂き(喰先き)継ぎ(合わせ)として、その二点を主に説明します。
@の本紙は、この手引きのために 高友社 理事長 蕗野雅宣先生にお願いして書いて頂いたものです。
写真は、作業台の上に敷き紙を伸ばし、本紙を広げたところです。
Aは紙取りです。 裏打ち紙は、そのままの長さで使うと2枚半ほど必要です。 幅は本紙より6cm広く、長さは喰裂きを作って重ねる分5cm位余分を考え、又継ぎ目が文字の上に来るよう考慮して裁断してください。〔裏打ち紙は(2)の「紙について」参照〕
 

@

A
 
 紙取りが終わったら喰裂きを作ります。
一般に裏打ち紙を5枚位にして継ぐ場合は、両端に喰裂を作って合わせますが、ここでは長いまま使うので、初心者には技術的に難しく、上から2枚の下端にのみ喰裂をつくります。

B喰裂きを作る2枚の紙の下方を揃え、端から2〜3cmに定規を置き、少し水を含ませた水刷毛(切継刷毛の方が良い)で定規に沿って細く水を付けて行きます。

C次にその上をヘラで強くこすり筋をいれます。
 
D定規と紙を一緒に作業台の端から2mmほど外に出します。

E定規を左手で押え、右小指を板の端かけ親指と人差し指で少しづつ引きちぎっていきます。
水の付いた部分がちぎられる訳ですから、細く水を入れなければなりません。
 初心者はヘラに水を付けながら筋を引いていくのも良い方法です。

Fこれが喰裂きの出来上がりです。毛先を大切にして下さい。 紙を上から順番に揃え、水糊の準備をします。
〔糊は(2)の「糊について」参照〕

G作業台の敷き紙の上に本紙を裏返して載せ、霧吹きで湿りを与えます。 
全般に湿ったところで紙が伸びるのを待ちます。(本紙が厚い場合は湿りを何度か与え一時別の場所で時間をおきましょう)

H軟らかい撫で刷毛で、静かに丁寧に伸ばします。 文字の上は墨を引っぱらないよう特に気をつけ強く擦らないこと。 伸び難い場合は何回か霧を加え少しづつ伸ばしてください。 次に本紙の上部と右側にスチール定規を載せておきます。

I今回は投げ裏打ちですので、糊付け台(机の上にアクリル板を敷くと良い)の上に裏打ち紙の表を上に喰裂を手前に載せ、糊付けは半紙の場合と同様、縦・横・放射状と満遍なく塗ってください。

J糊付けが終わったら紙の右端2cmほどに、掛け竿(竹ざしで良い)を置き、紙をたるみのでないよう軽く貼り付けます。

K掛け竿に貼った紙を持ち上げ、右手を添えて定規に沿って本紙の上に静かに置いていきます。

L撫で刷毛の先の方で軽く紙を伸ばし、シワをなくしてから定規をはずし、充分に撫で付けます。

M最初に貼った紙の喰裂の先端を5mm位残し定規を置き、初回と同じように次の裏打ちの用意をします。

N初回と同様、喰裂の上の定規に半分位掛けて紙を置きます。

O紙のシワを軽く伸ばし、定規の上で星突きを使って丁寧に喰裂を作っていきます。 これで正確な位置に上下の喰裂ができました。

P喰裂を作った定規を少し立て、斜め向こうへ抜き取ります。 毛先を傷めぬよう刷毛で押えてから軽く打ちます。
一枚目のように充分撫で付け、三枚目も同じ要領で貼りおえます。

Q裏打ちが完成したら、裏打ち紙の周囲に水刷毛で充分湿りを与えます。
これは紙が乾き、貼りついている部分を剥し易くするためです。

R裏打ち紙の最上部にだけ細く水糊をつけ、張り板に貼ります。 吊るし干しといい、大きな本紙は板に紙が貼りついて作業がし難いのと、剥す時に苦労をするので、この状態で一度乾燥させます。

S作業台から持ち上げる時は、星付きで上部の片隅から裏打ち紙と本紙を一緒に剥しますが、破れるおそれのある場合は、掛け竿に貼り付けて持ち上げると良いでしょう。

21)裏打ちを終え仮張り板に運び、上部を貼ったところです。

22)この状態で一度完全に乾かします。

23)乾いた本紙を仮張り板から剥し、作業台の上に裏返しに載せます。 霧吹きで極く軽く全般に湿りをあたえます。

24)裏打ち紙の周囲に回り糊(水糊より少し濃い目)をつけます。 肌裏の場合は水糊でも良いでしょう。
糊付けが終わったら左右どちらかの端にヘラ差しを付けます。必ず本紙までかかるように載せてください。

25)再び仮張り板に運び、本紙がよじれないよう左右交互に撫で刷毛で貼っていきます。
若干のたるみは自然に修正されますが、無理に引っ張らないよう注意してください。

26)完全に乾いたら、ヘラ差しから金ベラを差込み、進行方向へ起し気味に剥していきます。

27)下方半分ぐらいはがしたら、静かに手前に引くと剥がれます。

28)作業台の上に本紙を表向きに載せ、中央に長いアクリル定規を置いて文字の中心をとります。 字数の多い場合や絵の場合は、特に中心の取り方を慎重に決めてください。
次に左右どちらかの一辺に二本目の定規を置き、基準になる切断線を決め、紙がよじれないよう中央の定規を反対の端に移動してから、カッターで切り落とします。

29)今切断した一辺を定規に合わせ、正確に半分に折り返し、星突きで上下の幅を決めて、その印に定規を合わせて、もう一方の辺を切断します。

30)決まった両辺を定規に合わせ、その上に二本目の定規を載せて正確に二分し、上下の切断線を星突きできめます。

31)星突きの印に定規を当て、上下の二辺を切り落とします。 この時に念のため三角定規で直角を確認してください。

32)これで半切の裏打ちは終了です。
この状態で軸にも額にも又屏風にも使えますが、額に使う場合は、この上にもう一枚厚い紙を貼るのが一般的です。

みなさん!是非挑戦して見てください。 ご自分の作品を美しく仕上げた時は、とても嬉しいものです。







〔参考

 裏打ちで注意したいことは、滲み・色落ちなど、散らさないことです。 事前に是非チェックしてください。


参考1) 敷き紙の上に本紙を表にして載せ、墨の濃い所や色の落ちそうな部分に水を付け暫く待ちます。

参考2) その上に薄い和紙を載せ静かに押えて滲みを確認してください。

 もし滲みがでそうでしたら散り止めのため、新聞紙の上にでも本紙を載せ、ドーサ引きは難しいので、市販の定着剤(フキサチーフ)をスプレーし、完全に乾かしてから裏打ちに入ってください。
 宿墨などや赤絵の具は、この作業を何回か繰り返し行って見ることです。

 なお、作業台はシナベニヤがカッターを使うにも便利です。 作業台や定規などは、糊でよごれるので、常に良くふき取っておき、本紙を汚さないよう注意してください。 

B

D

F

H

J

L

N

P

R

21

23

25

27

29

31








参考1

C

E

G

I

K

M

O

Q

S

22

24

26

28

30

32








参考2

戻る            次へ(色紙の仕立て)